建築士になるために必要な構造力学の知識と勉強法
構造力学とは
構造力学は応用力学の一種
構造力学とは、構造物が荷重を受けたときの物理現象を、基礎的な数学や物理の知識を用いて学問する応用力学の一種です。
建物のような構造物は、重さ、圧力、外力、温度変化など外部からの荷重を受けています。その荷重によって生じる構造物内部の応力や変形、構造物自体の抵抗力などを数値計算したり解析するのが構造力学です。
建造物にかかる荷重には様々な種類があります。生活者の体重や家具の重量、地震や台風、豪雪などの重さ、地球の重量も荷重の一つです。このような様々な荷重がどのような形で構造物にアプローチし、それによって構造物内部がどのような影響を受け反応するのか?を構造力では体系的に学んでいきます。
建築においてなぜ構造力学を学ぶのか?
建築において構造力学を学ぶ意義は、ひとえに「安全で壊れない建物」を建設するためです。構造力学は様々な種類の荷重(外力)に対する構造物の影響や反応を解析します。
荷重が作用すると、構造物はそれに反応して内力(抵抗力)を働かせ、その結果として構造物に変形やひずみを生じさせるのがポイントです。部材が変形しひずみが生じると、構造物内部のバランスは崩れ、建物が傾いたり壊れたり、最悪の場合は倒壊したりする可能性もあります。
このような事態を避けるためには、建物が構造的に安全に設計されていなければなりません。どのような荷重を受けても大きな変形やひずみが生じないようにし、人間の安全を確保した上で、何年も壊れない建物を建設する必要があるのです。
構造力学はこの点で大いに活用することができ、建築関係者はそのエッセンスを学ぶ必要があります。
建築士試験における構造力学
安全で壊れない建物を建てるために構造力学は必要です。
建築士試験における出題内容と傾向を理解し、その点を対策しておけば試験に合格することは可能でしょう。
一級・二級共に建築士試験において「構造」は重要な科目の一つですが、そのうち構造力学の問題数は、1級建築士で30問中6~7問、二級建築士の場合も25問中6問程度といわれています。出題内容は、断面の性質、応力度・許容応力度、静定ラーメンの応力、静定トラスの応力、3ヒンジラーメン、断面2次モーメント、振動・全塑性モーメント・崩壊荷重…などです。
建築士試験における構造力学の出題内容を予測し、その部分の試験対策を立てていきましょう。
建築士になるための構造力学の勉強方法とは?
ここでは、建築士試験に合格するための構造力学の勉強方法のポイントを紹介しています。
メインの勉強法は“過去問を解く”こと!
建築士試験に受かるための構造力学の勉強法の一つは、ひたらすら「過去問」(過去の問題集)を解くことです。建築士の学科試験の出題内容は過去問に類似したもの、もしくはアレンジを加えた内容が出題されます。
従って、過去問を解ける実力を身に付けておけば、本番の試験でもかなりの点数をとることができるでしょう。もっとも、過去問から出るといっても、問題の選択肢の全てに過去問が用いられるわけではありません。4択のうち2つ、あるいは1つだけなど様々なパターンがあります。
漠然と過去問を解くのではなく、選択肢の全てに対して解答の正否を判定できるような勉強をしておくことが大切です。なお、建築士試験の過去問は、建築技術教育普及センターのホームページからダウンロードできます。
計算の公式と流れを暗記する
一級・二級を問わず建築士試験における構造力学の問題は、文章問題ではなく計算問題です。モーメントや図心、断面係数、曲げ応力度、座屈荷重、トランスの軸力、崩壊荷重、固有周期など項目はたくさんありますが、それぞれの計算問題を解くための公式があり、その公式に正しい数字を代入することができれば、問題を解いていくことができます。
構造力学における試験対策として、各項目の構造計算の公式と計算の流れを暗記できるようにしておきましょう。公式を暗記することは、構造力学の問題を効率よく解くための有効な方法です。
とにかく数をこなすこと!
構造力学は、できれば一から十まで本質を全て理解しておきたいところですが、時間との闘いになる試験対策ではそういうわけにもいきません。全体の理解度が不十分でも、ポイントを絞って対策を行い、試験技術としての構造力学の知識を身に付けておくことが大切です。
そのために必要なことの1つは、とにかく“数をこなす”ことです。過去問を解くにしても、構造計算の公式を覚えるにしても、ひたすら暗記とアウトプットを繰り返し、量をこなして問題の解き方を体に覚え込ませる必要があります。
構造力学は一夜漬けでクリアできるほど簡単な学問ではありませんが、試験となると話は別です。建築士の学科試験は選択形式(マークシート)による試験ですから、暗記とアウトプットの繰り返しによる物量作戦で対策は十分に可能です。
ただ、今後仕事として活用することを考えると、暗記だけでなく内容を理解することも大切なポイントとなります。