大学と専門学校の違い
このページでは、建築士を目指す人に向けて4年制大学にある建築学科と専門学校にある建築学科の違いをまとめています。進学先に悩んでいる人は参考にしてみてください。簡単に言ってしまえば、専門学校は「建築」の仕事をするための知識や技術を身につけるところというイメージです。一方で大学では「建築」について研究するための時間をたくさんとることができます。またビルや橋などインフラ系の大きな建物を建てる場合、一級建築士の資格や社会政策などについて知識が必要となり、大学での研究や勉強が役に立つでしょう。
専門学校の建築学科の強み
(1)短期間で建築士を目指せる
専門学校には、4年制大学よりも短期間で建築士になりやすいという利点があることです。二級建築士は、大学や専門学校で建築設計の過程を修了すれば、実務経験がなくても受験可能となります。専門学校の期間は学校の方針によって異なりますが、2~3年のところがほとんどですが4年制大学よりも早くプログラムを修了することで、2級建築士の試験を早く受験することができます。
2級建築士の資格を取得すれば、すぐに建築業界で建築士として働くことができるので、短期間で建築士になりたい人におすすめです。
(2)即戦力になるスキルが身につく
専門学校には基本的に普通科目の授業がありません。建築に特化した授業だけを受けられるので、卒業後すぐに建築業界で活躍できる実践的なスキルを身につけやすいでしょう。
4年制大学の建築学科の強み
(1)一級建築士の合格率が高い
一級建築士は、大学・専門学校の建築学科を卒業後2~4年の実務経験を積んだ人だけに受験資格が与えられる難易度の高い国家資格です。一級建築士の合格率が最も高いのは、4年制大学の建築学科卒業生。公益財団法人・建築技術教育普及センターが発表している平成29年度のデータによると、4年制大学の建築学科卒業生が試験合格者の7割を占めていました。一般的な設計は二級建築士の資格があれば手掛けられますが、大規模な施設の設計を手掛けられるのは一級建築士のみ。世界的な建築士になりたいと考えているなら、4年制大学の方が叶う確率は高いでしょう。
(2)建築学・経歴・一般教養をまとめて習得できる
4年制大学では、建築だけでなく幅広い教育を受けることができます。4年制大学で建築の学位を取得すれば、建築が自分に合わないと感じた場合でも、別の道に進みやすいという安心感が得られます。
建築家になるために通うべき大学について
目指す建築家で通う大学や学部・学科が変わる
建築士を目指すのであれば、建築学科のある大学や専門学校に進んだ方が良いのは言うまでもありません。しかし、「建築」というジャンルは幅広いものです。「どんな建築家・建築士になりたいのか」によって、通うべき学校や学部・学科が変わります。
通うべき学校を決めるためには「どんな学校なのか」を調べるだけではなく、まずは自分自身が理想とする建築家をイメージすることこそ、学校選びの一歩目です。
土木系学科
土木系学科は道路や空港、ダムに携わる場合の進路として候補に挙がります。公共事業、あるいは大掛かりなインフラに携わる建築士への道に進みたい場合、土木系学科が適任です。土木系学科の授業は、そういった点を重点的に学べます。実験を交えて、インフラ事業に携わる設計士に必要なスキルを磨き、卒業と同時に即戦力となるための授業を展開しているのがポイントです。
建築学科
一級建築士、二級建築士を目指すのであれば建築学科です。設計や製図など設計士としての基礎を学び、二級建築士合格を目指した授業が用意されています。もちろんカリキュラムはそれぞれの学校によって異なるので、その点が選択肢となるでしょう。
試験問題対策に力を入れている学校もあれば、試験対策はもちろん社会人としてデビューした際に即戦力となれるようにという理念を持って授業を行っている学校もあります。
建築士と設計士について
建築の仕事に就きたいと考えた時、建築士になりたい人もいれば、設計士になりたいと考える人もいるでしょう。そもそも、建築士と設計士の違いがよく分からないという人もいるかもしれません。実際、建築士と設計士は異なる存在です。
建築士は国家試験に合格することで名乗れますが、設計士には必須となる資格が用意されていません。そのため、設計士の定義としては「建築士ではないけど設計に関する仕事に携わる」ことになります。設計士の仕事は、主に建築士のサポートです。
設計士になるには
設計士とは資格保持者ではありません。そのため、端的には「誰でも名乗れる・就ける」お仕事です。国家資格である建築士に関しては、無資格者が「建築士」を名乗れば違反となります。業界外から転職し、設計に関わる仕事をすれば「設計士」を名乗れるでしょう。設計士になるためのハードルは、建築士と比べて低いといえます。
設計士でも設計ができる!
条件付きではありますが、設計士が手掛けられる建物もあります。それは100平方メートル未満の木造建築です。この場合、建築士資格が不要とされます。100平方メートル未満ということは10メートル未満×10メートル未満で、かつ木造のみとなると活躍の場は限られるため、対応する頻度は「たまに設計する程度」でしょう。
積極的に設計の仕事に携わりたいのであれば、やはり建築士資格を取得するのがおすすめです。
建築系の大学の選び方について
建築関連の学科・学部を用意している大学は多数あります。それぞれの大学によって、特徴や学ぶジャンルが違うため、自分が進みたい道を明確にしておくのがポイントです。建築業界に進みたいのであれば、「建築学科」への進学は前提となります。その際にどのジャンルに進むのか、細かい判断が求められるでしょう。
意匠設計について
建築業界における意匠設計は、建物のデザインを対応します。意匠設計は建築の学問の中でも基本的なものなので、多くの学科・学部にて学べるのが特徴です。仕事としては、依頼者・クライアントの要望に応えるデザインを提出します。デッサン力はもちろん、依頼者・クライアントが何を求めているのか細かいニーズに気付くためのコミュニケーション能力も必要です。
構造設計について
強度に関する分野が構造設計となります。構造設計はビルや住宅など、建物の構造の強度について計算するのが特徴です。特に日本では、耐震技術の進歩が目覚ましいという特徴があります。裏を返せば、それだけ自然災害が多いからこそ、求められる内容も質が高くなければいけません。
自然災害の脅威が増している昨今、構造設計への注目度も高まっています。今後も起こりうる災害に備えるというのも大切です。また、複雑な建築に対応した計算も必須となるでしょう。
環境設計について
環境設計は太陽の光、風、気候など、いわゆる環境面を意識した中での設計のことです。日本は南北に長い立地に平野部と盆地、あるいは海沿いなど、様々な環境があります。それらの環境を踏まえ、それぞれの環境に応じた設計をしようという考えが環境設計です。建築分野の理解はもちろんですが、各地の環境に関しての理解も求められます。
材料科学について
建築には様々な材料が用いられているのは言うまでもありませんが、その点を含めたジャンルが材料科学です。研究によって、新しい材料が生まれることも珍しくない建築業界。情報に敏感でなければならない点に加え、それぞれの材料の特性を活かしたうえでの「適材適所」が求められるなど、確かな知識を必要とするジャンルです。
都市計画や造成
建物という単位ではなく「都市」という単位で考えたものです。一般的に、ビルや住宅はあくまでも建物のみを指しますが、都市計画や造成は建物を含め「街をどのように作るのか」を考えるのが特徴です。都市計画・造成に関しては建築学科ではなく、文系学科と合同で資料・素材などを用意している大学もあります。
大学の選び方について
建築系の大学に関しても、様々な学部・学科が用意されています。自分がどのような建築士になりたいのかによって、進むべき道は異なるでしょう。カリキュラムの内容や進路実績などを考慮することも大切です。特に進路に関しては、入学を考えている学生にとって重要なポイントとなります。
勉強で培ったスキルを発揮できる職場に就けるのかという点も大切です。仮に実績が乏しい場合、就職後に建築学科での勉強を役立てられない可能性もあります。自分の進みたい道の学部・学科を用意しているのかに加えて、卒業生たちがどこに就職しているのかも要チェックです。入学するということは、いずれ自分も卒業生になります。どこに就職しているのかは、自分自身の進路の指標にもなるのでよく調べておきましょう。
進学先選びのポイントは「なにを習得したいか」
建築士になるには国家資格(一級建築士、二級建築士、もしくは木造建築士)が必要です。まずは二級建築士の資格を取得して早く建築業界で活躍したい!という人は専門学校へ、一級建築士の合格率が高い方を選びたいという人は4年制大学へ進学を考えてみてはいかがでしょうか?
4年制大学と専門学校の強みを紹介してきましたが、これらはあくまで目安です。専門学校でありながら大卒扱いとなる資格を取得できるところもあれば、大学でありながら即戦力となるスキル重視のカリキュラムを設けているところもあります。国家資格もまた、受験条件の詳細は違いますが、どちらの学校に行っても取得することは可能です。結局のところ建築士になれるかどうかは自分次第。下調べを徹底して、「ここなら頑張れる!」と思える学校を見つけ出してくださいね。