一級建築士が技術者としてできることは?
一級建築士であれば、条件によって様々な分野で技術者としても認められます。このページでは、一級建築士の資格を有している技術者が挑戦できる役割について解説します。
主任技術者
国土交通省の定めでは、建設業者には、工事現場の施工に関する技術的な管理者である「主任技術者」を、当該の工事現場に設置することが義務付けられています。
主任技術者は、元請工事における下請業務の合計金額が4000万円未満(建築一式工事の場合は6000万円未満)の場合、工事現場に設置されるなければならないのです(4000万円以上の場合は「管理技術者」を設置する義務があります)。
主任技術者を務めるために求められる条件には、一級建築士であることも含まれています。一級建築士であれば、主任技術者として工事を管理することができます。
情報参考元:国土交通省【PDF】(https://www.mlit.go.jp/common/001156518.pdf)
監理技術者
上記と同様に、元請工事における下請業務の合計金額が4000万円以上の場合、建築業者は「管理技術者」を設置する義務があります。「管理技術者」として認められる要件としては、下記があります。
- 一級国家資格者/一級施工管理技士、一級建築士、技術士
- 実務経験者/「主任技術者」としての条件を満たす者のうち、規定以上の条件における指導監督の実務経験がある者
※指定建設業を除く - 国土交通大臣特別認定者
防火管理者
「防火管理者」は、施設等の火災被害を防ぐために防火対策や管理を行う責任者として、「消防法」で規定されている国家資格のひとつです。
収容人数・面積など、施設によっては防火管理者を専任で設置することが法律で義務付けられており、ビルやテナントを運営するオーナーや企業は、これを遵守しなければなりません。
防火管理者の代表的な業務は下記になります。
- 消防計画(火災被害の防止策や被害を最小化する対応・体制)の作成・管理
- 防災訓練の実施・監督
- 防火設備の点検
- 他の建築設計事務所との業務連携・業務範囲の設定
- 建築士・技術者の監督
防火管理者(甲種)として認められるためには、講習等を受講する必要がありますが、一級建築士であれば、管轄の消防署に規定の届出を行うことで、講習を受けなくても有資格者として認められます。
ただしこの場合は、一級建築士の資格を有しながら、同時に「一年以上の防火管理の実務経験を有すること」が条件になっています。
情報参考元:日本消防設備安全センター(https://www.fesc.or.jp/jukou/boka/)
防火対象物点検資格者
「防火対象物点検資格者」は、平成14年4月に改正された「消防法」において新たに規定されるようになった技術者です。
防火対象物点検資格者は、規定の防火対象物に対して総合的な点検を行います。「消防法」の法令や火災予防策などの専門知識をもって点検することはもちろん、消防計画や火災予防といった観点からしっかりと検討を行い、消防機関に報告する業務なのです。
防火対象物点検資格者になるには、規定の科目を受講・修了する必要がありますが、一級建築士であれば、「施設および設備の維持管理」に関する講習を免除されることができます。
ただし、修了考査は免除されません。
消防設備点検資格者
「消防設備点検資格者」は、いざというときに消防の用具・設備がしっかりと機能するように、用具・設備の正しい設置や適正な維持管理、点検を行う役割を担っています。
消防設備点検資格者には、第1種・第2種・特種という3つの種別が定められています。「消防法」の規定に従い、「一般財団法人 日本消防設備安全センター」が全国各地で「消防設備点検資格者講習」を実施しており、これを修了することで有資格者として認められます。
講習を受講するには、規定の受講資格を有している必要がありますが、一級建築士はこれに含まれます。規定の書類を提出し、受講申請を行いましょう。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)
「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」は、商業施設や宿泊施設といった特定の建築物を安全に維持管理していくために、「維持管理業計画」の立案から実施、状態の評価、さらにはトラブル等の改善案の作成、意見の申請等を行う技術者です。国家資格のひとつとして定められています。
講習を受講する条件のひとつとして、一級建築士の登録を受けた者であることが含まれています。講習を受け、修了試験に合格することで有資格者として認定されます。
点検者
「建築基準法」では、調査資格を有する点検者が定期報告を行う「定期報告制度」が義務付けられています。報告しなければならない調査内容は、規定の特定建築物における敷地、構造、建築設備などです。
一級建築士は、手続きなしに「特定建築物(特殊建築物)調査」や「建築設備検査」など、すべての検査を行うことが認められています。建物の定期報告とあわせて、建築物全体の相談受け付けも可能です。
まとめ
このページでは、一級建築士の資格を有している技術者が挑戦できる役割について紹介しました。
さまざまなお仕事でも活躍できる資格でもあるので、建築士を目指す際は一級建築士の資格取得に向けて行動してみるのも良いでしょう。