建築士が知るべき代表的な工法とは?
このページでは、建築士であれば当然ながら知っておきたい代表的な建築工法について紹介します。
木造軸組工法
木造住宅には、大きく分けて「木造軸組工法」と「2×4(ツーバイフォー)工法」があります。
前者の「木造軸組工法」は、日本の風土にあわせて考案された工法で、伝統的な神社仏閣などにも見られます。柱と梁を組み合わせる木造軸組工法は、現在でも日本の木造住宅で採用されている工法です。
木造軸組工法のメリット
「木造軸組工法」のメリットとしては、まずコストの低さがあります。木材は、鉄やコンクリートよりも安価な建材だからです。
さらに、数センチ単位の細かい空間調整ができる、自由度の高い間取りを採用でき、さらにリフォームもしやすい、木材ならではの落ち着いた雰囲気を感じられる、といったこともメリットとしてあげられます。
木造軸組工法のデメリット
「木造軸組工法」で注意したいことが、まず耐震性です。もちろん「耐震性に問題がある」というわけではありませんが、「2×4工法」や鉄筋コンクリートを用いた工法よりも不利と言われています。
また、木材ならではの耐火性、シロアリ被害といった課題についてもしっかりと注意しておきましょう。木造軸組工法でも適切なメンテナンスを施すことで、驚くほど長持ちする家になります。木造住宅であっても耐火建築物として認められることが可能です。
2×4(ツーバイフォー)工法
「2×4(ツーバイフォー)工法」は、北米から輸入された木造建築の工法です。「2×4」とは、2×4インチのサイズにカットした木材を用いている、ということ。
均一サイズの角材と合板を組み合わせて、壁や床、天井などを建築していく比較的単純な工法であるため、ハウスメーカーを中心に日本にも導入されていきました。
2×4(ツーバイフォー)工法のメリット
「2×4(ツーバイフォー)工法」は、耐震性・耐風性に優れています。なぜなら、基本的に2×4インチの角材で構成された「面」で家が組み立てられているからです。地震や台風などの自然災害にも対応してくれます。
さらに「面で構成されている」ということは、機密性が高い高断熱の家づくりになります。無駄な光熱費を抑えられる、ということです。同様の理由から、耐火性能でも有利な工法とも言われています。
そのほか、システム化された工法であるため、比較的に短期で施工できるなど、メリットがたくさんあるのです。
2×4(ツーバイフォー)工法のデメリット
「2×4(ツーバイフォー)工法」は、面によって構成されていることから、間取りのデザインに制限があります。また、リフォームで間取りを変更することも難しいとされています。壁を取り払って広い部屋にする、といったことも、面で構成されている2×4(ツーバイフォー)工法では、不可能な場合があります。
プレハブ工法
「プレハブ」とは、「プレファブリケーション=あらかじめ工作すること」の略称です。その名の通り、プレハブ工法の家づくりでは、大工職人が建築現場で建材を加工したり、組み立てたりするのではなく、事前に工場で壁や床といった部材をつくって現場に搬入、現場ではほとんど組み立てるだけ、という作業になります。
大手ハウスメーカーが得意として手がけているプレハブ工法では、それぞれの部材が規格化されているため、比較的短い工期で家づくりが行われるでしょう。使用される素材も「木質」「鉄骨」「コンクリート」など様々です。
プレハブ工法のメリット
「プレハブ工法」では、住宅の品質が職人の経験や技術によって左右されることがありません。つねに保証された品質の住宅が手に入るということは大きなメリットと言えます。
また、部材が工場で製造されるため、天候によって納期が変わることもありません。このような比較的短い工期のおかげで、人件費等が抑えられるため、コストとしてもリーズナブルになります。
プレハブ工法のデメリット
「プレハブ工法」のデメリットは、間取りやリフォームにおけるデザイン制限があるということです。部材は規格化されており、しかも工場で大量生産されるため、家の構造もまた規格化されることになります。このため、変形地や狭小地ではプレハブ工法を採用できない、といった場合もあります。
鉄骨造
「鉄骨造」は、梁や柱に骨組みの鉄骨(Steel)を使用する工法で、「S造」とも言われます。鉄骨造の特徴は、ビルやマンション、工場といった比較的大きな建造物に採用されることですが、もちろん戸建住宅でも使われることがあります。
鉄骨造には、重量鉄骨造と軽量鉄骨造の2種類が主にありますが、戸建住宅では軽量鉄骨造が採用されています。
鉄骨造のメリット
「鉄骨造」では、プレハブ工法に似て、必要な建材を事前に工場で製造してから現場で組み立てるため、結果的に工期が比較的短い、住宅の品質が安定している、建築費を抑えられるといったメリットがあります。
鉄骨造のデメリット
やや意外かもしれませんが、「鉄骨造」の住宅では生活音が聞こえやすいと言われています。とりわけ軽量鉄骨造では、木造住宅よりも音が聞こえやすいとされています。原因は、鉄骨造の高い密閉性です。
また、耐火性の面でも意外に課題があります。建材に使われている鉄骨が、火災時に高温の火や熱にあてられることで柔らかくなり、強度が落ちてしまうからです。
鉄筋コンクリート造
「鉄筋コンクリート造」とは、「RC造」とも表記され、鉄筋を建材に組み上げた柱や梁、壁に、コンクリートを打ち込む建造方法です。
鉄筋コンクリート造のマンションや住宅では、さらに下記の二種類の構造が採用されています。
ラーメン構造とは
「ラーメン構造」は、ドイツ語の「Rahmen(=枠、額縁)」という言葉から名付けられた工法のこと。建物を柱と梁でジャングルジムのように構成し、そこに壁や床を張っていく造りになります。「鉄筋コンクリート造」や「鉄骨造」の建造物で多用されており、間取りの自由度が高い、室内空間が広いのが特徴です。
壁式構造とは
「壁式構造」とは、ラーメン構造とは異なり、面=「耐力壁」を中心とする建造工法です。壁式構造の建物では強固な鉄筋コンクリートの壁が使用されるため、断熱性や防音性にも優れています。
鉄筋コンクリート造のメリット
「鉄筋コンクリート造」のメリットとしては、まず耐火性の高さをあげられます。主な建材であるコンクリートが不燃材料であることから、火災に強い住宅になるのです。
さらには、大きな地震にも耐えうる耐久性の高さ、遮音性の高さといったメリットもまた、コンクリートという建材に由来しています。頑丈な住宅づくりにぴったりでしょう。
鉄筋コンクリート造のデメリット
「鉄筋コンクリート造」のデメリットは、コストの高さです。建築コストが高いことはもちろん、不要になった住宅を解体する際も、費用が高くなります。
まとめ
このページでは、日本の建築物で主に採用されている建築工法について紹介しました。
建築士として働く場合、どのような工法を採用するかという取り決めも重要なポイントとなります。地域の環境や施主の要望もふまえて考えていくことになるでしょう。そのためにも、工法はもちろん建築基準法や構造計算についてもしっかり学んでおきましょう。