海外で建築士になる方法は?
こちらでは海外で建築士になるために知っておきたいことを解説しています。それぞれの国によって試験の有無や受験資格についても異なるので、検討している国の条件をしっかり確認しておきましょう。
各国の建築試験制度の内容
ここでは各国の建築試験制度の内容として、試験名称・資格名称・試験方法・受験資格・合格率について解説していきます。
オーストラリア
オーストラリアでは建築士試験の試験名称のことを建築実務試験(APE)と呼んでいます。
資格名称はArchitectで、試験方法は小論文と面接です。受験資格は認定されている大学での建築等の学位(5年)+2年間以上の実務が必要となります(ただし、うち1年は学歴資格要件を満たしてからのもの)。合格率は全国で85%程度です(調査期間記載なし・財団法人建築技術教育普及センター調べ※)。
アメリカ
アメリカの場合、試験名称は建築家登録試験(ARE)・資格名称はオーストラリアと同じくArchitect(建築家)と呼ばれています。
試験方法はコンピュータによる多枝選択式・製図で、受験資格はNAABにより認定された大学建築課程(5年または6年)+3年(一部の州で2年)の実務が必要です。2000年度の科目ごとの合格率は61~90%となっています(財団法人建築技術教育普及センター調べ※)。
中国
中国では一級注冊建築師試験と呼ばれています。
資格名称は注冊建築師で、試験方法は多枝選択式と製図です。受験資格として、以下のいずれかを満たしておく必要があります。
- 大学等(5年)建築学士号取得+実務3年
- 大学等(5年)建築修士号取得+実務2年
- 高級工程師技術職+実務3年
- 工程師技術職+実務5年
- 設計上の優れた実績による認定
なお、合格率は概ね5%前後(調査期間記載なし・財団法人建築技術教育普及センター調べ※)となっており、狭き門と言えるでしょう。
台湾
台湾では建築師高等考試と呼ばれており、資格名称は建築師・試験方法は記述式です。
受験資格は以下のいずれかを満たしておく必要があります。
- 専門科以上の学校卒、教育部承認の海外の同等学校
- 公立および登録された私立の大学等、教育部承認の海外大学等卒で建築設計科目の18単位以上を履修
- 建築工事科試験に合格し建築工事の実務4年以上
2000年度の合格率は8.7%程度(財団法人建築技術教育普及センター調べ※)となっており、中国と同様に難関と言えるでしょう。
韓国
韓国では建築士資格試験と呼ばれています。資格名称は日本と同じく建築士で、試験方法は多枝選択式と製図です。受験資格としては、以下のいずれかを満たしておく必要があります。
- 建築士予備試験+7年間の実務
- 建築分野の技士1級取得+7年の実務
- 建築分野の技術士資格者等
- 建築士予備試験か技士1級+建築士補5年の実務
- 外国での免許等+5年の実務(科目免除有)
なお、上記の予備試験受験資格には以下の条件が必要です。
- 大学卒・専門大学卒+2年の実務
- 高校か3年制高等技術学校卒+4年の実務学歴なしの場合は9年の実務
なお、合格率は公表されていません。
英国
英国では専門実務試験と呼ばれており、オーストラリア・アメリカと同じくArchitect(建築家)としています。
試験方法は記述式と面接です。受験資格は以下のいずれかを満たしておく必要があります。
- 教育課程3年間(PartⅠに相当)+教育課程2年間(PartⅡに相当)+2年以上の実務経験
- RIBAのPartⅠレベル試験+PartⅡレベル試験+実務経験2年
合格率は公表されていません。
登録は建築家登録委員会(ARB)で行います。更新制度は1年です。
ドイツ
ドイツでは試験が行われないケースがあります。資格名称は建築家・内装建築家・景観建築家(都市計画家の登録も10州であり)などと呼ばれています。
資格は登録申請となっており、獲得するには独大学で建築学等を(3~5年)履修後+2~3年の実務経験が必要です。
なお、学歴なしの場合は実務経験のみで筆記試験、面接試験等が行われています。(バイエルン州)
上述の合格率は公表されていません。
フィンランド
フィンランドでは資格試験は行われません。建築家または建築技士と呼ばれています。
建築家はフィンランドでヘルシンキ工科大学、オウル大学、タンペレ工科大学や海外における同等の大学の建築専攻卒業が条件です。
建築技士は高等職業専門学校での建築の学位取得者の場合、そのように呼ばれます。
海外で活躍したいなら持っておいたほうが良い資格
海外で活躍するには上述に加えて、以下のような資格も持っておいたほうがベターです。
- 一級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 認定コンストラクション・マネジャー
もちろん、これらの資格は必須ではありません。しかし、世界市場においても日本の建築技術は海外でも評価されています。
日本の建築技術を幅広く学ぶことで「建築の本質と基本」を海外でも活用できるのです。これは日本から海外へ羽ばたき、活躍するときの大きな力になるでしょう。
また、活躍先の語学については学んでおかなくてはいけません。普段のクライアントとのコミュニケーションや依頼内容の齟齬を防止するためにも、スムーズな会話や読み書きは必須です。
まとめ
このように海外で建築士として活躍するには様々なハードルがあります。
特に語学は海外で活躍するにおいてベースとなる部分です。ある程度マスターするには時間や労力を要するかもしれません。
ただ、海外での日本の建築技術は評価が高く、ご自身にとっても建築士としてより輝くきっかけになるでしょう。ぜひ前向きに挑戦してみてください。