建築士は結露の問題と対策を理解しておこう
建築士なら、結露のメカニズムと対策を理解しておいたほうがいいでしょう。結露を甘く見ると、家全体に悪影響を与えるからです。結露のメカニズムや問題点や対策を解説します。
結露はなぜ起こるのか
結露は、グラスに冷えたビールを注ぐと表面に水滴が付くのと同じ現象です。空気は温度次第で、含むことができる水蒸気の量が違います。飽和水蒸気量といいますが、空気は暖かいほど水蒸気をたくさん含むことができるのです。
暖かい水蒸気を含んだ空気が冷えたとき、飽和水蒸気量を超えます。そのとき、余った水蒸気が水に変わると結露が起きるのです。温度が低い環境下では、確かに結露は起きやすいですが、空気中に水蒸気があまり含まれていないと結露は起きません。
温度が高くても、過剰に水蒸気がある環境だと結露は起きます。結露が起きるメカニズムは、温度と水蒸気が大きく関係するのです。
結露はどうやって起こる?
温度は30度、湿度が50%の部屋をイメージしてみてください。30度の部屋の水蒸気は15.2/m3です。もし30度、湿度50%の部屋を0度まで冷やすと、水蒸気はどうなるでしょうか?
空気は温度により、水蒸気を含むことができる量は決まっています。飽和水蒸気量といいますが、0度だと4.8g/m3です。元々の水蒸気15.2g/m3が、部屋の温度が冷やされたことで飽和水蒸気量の4.8g/m3になります。15.2g/m3から4.8/m3を引くと10.4g/m3。10.4g/m3はあまった水蒸気で、これが結露となります。これが、結露のメカニズムです。
結露の種類
結露には、表面結露と内部結露の2種類があります。それぞれ特徴があり、特徴や引き起こされるトラブルも異なるのです。建築のプロとして知っておきたい知識でしょう。
表面結露
表面結露は、窓や壁や天井の表面に起きる結露です。水蒸気を含む暖かい空気が、湿度の低い壁や天井に触れて起きます。冬場、暖房をつけると窓の表面に結露が起きますが同じ現象です。
断熱材が不十分だと、壁の表面にも結露が起きます。また、表面結露はダニやカビを誘発する原因のひとつです。カビの胞子や、ダニの死骸はぜんそくやアレルギーの原因とも考えられており、健康上の問題でも対策が求められます。断熱材や湿度を調整するなどの配慮が必要です。
表面結露の防止策
室内の表面温度を下げないようにするのが有効です。根本的に表面結露対策をしたいなら、建物の断熱化への意識がポイントになります。家の中に冷えた部分を作らないようにしましょう。
温度が下がりやすい場所は、コーナー部分や家具の裏側や人の出入りがない部屋です。窓は断熱性の高い複層ガラスが有効な予防策になります。内装材についても、調質性の高い建材もあるため、断熱性の高い建築を検討するなら抑えておいたほうがいいでしょう。
内部結露
内部結露も、厄介なトラブルです。部屋の中の暖かい空気が、壁の内部にある断熱材まで入ります。温度が低下すると、飽和水蒸気量を超えてしまい、内部結露が発生するのです。
内部結露が厄介なのは、長期化すると柱や土台の腐食につながる点です。構造材に瑕疵があると、建築後10年以内なら施工業者の責任で補修しなければなりません。これは住宅の品質確保促進法でも決められています。原因が結露でも瑕疵と判断されるため建築士としては注意が必要です。
内部結露の防止策
内部結露を防ぐには、壁の中に低い温度になるような場所を作らないことです。温度が低くなる場所に、水蒸気を入れない工夫も必要でしょう。ただ、水蒸気の分子は非常に細かく、建材を通り抜けるほどです。繊維系の断熱材は水蒸気を通しやすいため、特に防湿材の選定や施工に配慮したほうがいいでしょう。