構造設計一級建築士とは
このページでは、2008年に創設された資格「構造設計1級建築士」について、資格の特徴や業務内容、資格取得のメリットなどをまとめて解説しています。
構造設計一級建築士とはどんな資格か
構造設計一級建築士とは?
構造設計一級建築士とは、建築物の構造設計に関する知識と技術を習得した人のことです。資格としては一級建築士の上位にあたります。高度な構造設計が求められる大規模建築物などを構造設計するときや、他の一級建築士が設計した構造物の設計内容を確認し、適合性を判断するために必要な資格です。
構造設計一級建築士の創設理由と耐震偽装問題
構造設計一級建築士の資格が創設された理由としては、2005年に大きな社会問題となった「耐震偽装問題」が大きく影響しています。
一級建築士によって作成された構造計算書に偽装が発覚し、その構造計算書にもとづいて建築された複数の建築物において、国が建築基準法によって定めた耐震強度の基準を満たしていないことが判明しました。
結果として、この耐震偽装問題は日本各地の多くの分譲マンションや国民に大きな影響を与えることとなります。そのため、国としても改めて構造設計について重要視し、建築物に関する客観的な信頼性や安全性を示す基準として、構造設計一級建築士の資格が設立されました。
構造設計一級建築士は、日本の建築業界の健全性を判断する必要不可欠な職種といえるでしょう。
構造設計一級建築士の設計が求められる建築物
構造設計一級建築士による設計、もしくは適合確認が必須の建築物としては、原則として以下のような建築物が対象になります。
- 一級建築士の業務独占に係る建築物のうち、構造方法について大臣認定が義務づけられている高さ60m超の建築物(建築基準法第20条第1項第1号)
- ルート2、ルート3、限界耐力計算による構造計算が義務づけられた高さ60m以下の建築物(建築基準法第20条第1項第2号)
さまざまな建築物が想定されますが、例えば4階建て以上の鉄筋コンクリートのマンションなどが対象となります。
構造設計とは?
構造設計とは、建築の耐久性や耐震性を担保するために重要な構造計算を行って建築計画を考える作業です。大規模な建築物や高層階の建物、複雑なデザインの構造物などを実現するには、極めて複雑な構造計算が必要です。そのため、高度な専門知識と最新の建築資材や工法まで含めた情報の理解が求められます。
構造設計一級建築士の受験資格
構造設計一級建築士の資格取得には、原則として以下の2つの条件を満たさなければなりません。
- 一級建築士として5年以上、構造設計の業務に従事した経験
- 国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習課程の修了
なお、修了考査の難易度は高く、一級建築士でも専門の学習が重要です。
構造設計一級建築士を取得するメリット
東日本大震災などを経験してきた日本では、構造設計一級建築士を必要とする建築物が求められるぶん、構造設計一級建築士の重要性は増しています。
一級建築士や二級建築士と比較すると、構造設計一級建築士の数は決して多くありません。ゆえに、有資格者になると構造計算・構造設計を駆使したうえで建築物を生み出せる立場となり、キャリアアップにつながるでしょう。